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隣の三毛

 【身元保証人】

家裁の離婚調停書の控えを携えて、亜希子は自宅住民票のあるO市の市役所へ出向いた。そこでも、やはり新しい住居が必要だという。今度は不動産屋をあたる。何カ所も見学に行き、現住所からかなり離れた、学生の多い町にエレベーター付きワンルームマンションが見つかった。6畳一間の小さなIHコンロ付き流し台にエアコン、家具付きで家賃は2万円である。

 ところが、契約の段になってまた問題が発生した。敷金保証金は要らないが、保証協会から審査が来るという。3日後、果たして電話があった。

馬鹿正直な亜希子は、国民年金の受取額は月に4万足らず、年額40万であると、問われるまま話したのだ。もしも、僕がそのとき電話に出たならば、要領よく年収は120万位あると、相手を安心させただろうと思う、つまり年金は月4万でも、生活保護受給費と合わせて月10万にはなるからである。もちろん、不動産屋も保証協会もこれから生活保護費を受給するとは知らないからだ。そして案の定、不動産会社から、電話があり、「だれか他に身元保証人はいませんか」というのである。

 猫の僕にはそんな甲斐もないので、亜希子は世話になりたくなかった兄夫婦に頭をさげて保証人をお願いすることになった。妹の固い決心にとうとうあきらめて、離婚に賛成でなかった兄夫婦も、それでも引き受けてくれたのだった。

 亜希子はこれでついに、生活基盤は整ったと、新住居所在地のO市役所に出向いた。しかし、そんなに簡単に生活保護者にはなれなかった。 つづく